愛犬の息が荒く、苦しそうに見える場合は病気が潜んでいる可能性があります。
息が荒くなる原因はさまざまですが、異常に気づくためにも普段から呼吸数を測ったり、対処法を知っておいたりするともしものときに役立ちます。
そこで本記事では、犬の息が荒くなる原因や呼吸数の測り方、呼吸が荒い場合に考えられる病気や対処法などについてくわしく解説します。
目次
犬の息が荒い?まずはハアハアするパンティングの特徴や呼吸の測り方を知ろう
犬の呼吸が荒くなるパンディングは、口を開けて舌を出した状態で「ハアハア」と呼吸を繰り返すのが特徴です。
パンディングの最中は呼吸数が多くなりますが、体温が下がるにつれて自然と落ち着けば健康な状態であると言えるでしょう。
また犬のパンディングが正常かどうかを知るためには、呼吸数を目安にすると便利です。
犬の呼吸数は、正常時の場合で1分間に10〜35回、安静にしている場合で1分間に40回未満、眠っているときで25回未満が正常値と言われています。
呼吸数の測り方は、犬の胸やお腹が膨らむ(または上下に動く)回数を数えます。
呼吸による動きがわかりづらければ、犬の鼻の前に手鏡をかざして息で鏡が曇る回数を数えても良いでしょう。15秒計測すれば4倍、20秒計測すれば3倍で1分あたりの呼吸数を把握することが可能です。
犬の息が荒い原因
犬の息が荒くなるのは、以下の原因が考えられます。
- 運動
- 体温調節
- ストレス
- 誤飲やケガ
- 病気
運動や体温調節のために息が荒くなるのはごく自然なことであり、時間とともに呼吸数が落ち着けば問題はありません。しかし、ストレスや誤飲、病気などをきっかけに息が荒くなるようなら早めの対処が必要になります。
ここで、犬の息が荒くなる原因についてくわしく解説します。
運動
犬だけではありませんが、運動をした後は呼吸が早く荒くなります。運動で酸素を消費した体に酸素を取り入れるための生理現象です。
また手足が不自由な犬や肥満の犬は、散歩や室内の遊びでも生きが荒くなる場合があるので、体質に合わせて適度な運動を取り入れるとよいでしょう。
運動により息が荒い場合は、水分を与えてよく休ませることで通常の呼吸に戻る可能性が高いです。
夏の暑さで体温調節が必要
犬は人間と違って、汗をかいて体温を下げることができません。その代わりに、パンディングをすることで自ら体温を調節しています。
夏場の暑い時期にパンディングをしがちなのも、ほとんどの場合体温調節をしているサインです。
運動時と同じく、体温調節によるパンディングは生理現象でもあるため、室温を調節して安静にしていれば通常の呼吸に戻る可能性が高いでしょう。
落ち着きがないならストレスの可能性も
犬は、ストレスや緊張状態によってパンディングを起こすことがあります。パンディングだけではなく、あくびをしたり尻尾を後ろ足の間に隠したりするのも、ストレスを感じているサインです。
ストレスによるパンディングは、精神的要因によって交感神経が優位になるのが原因です。時間をおいたりストレスの原因を取り除いたりすれば、呼吸も正常に戻るでしょう。
異物の誤飲やケガ
誤飲により異物が喉や食道に詰まってしまうと、息が苦しくなってパンディングや努力性呼吸(全身を使った呼吸)をする場合があります。それだけではなく、ネギ類などの誤食で中毒を起こしている可能性もゼロではありません。
どのようなケースにせよ、異物の誤飲によりパンディングを起こしていれば早期治療が必要です。危険な食材を食べた可能性があれば、迷わず病院を受診しましょう。
また、ケガにより痛みを我慢している際もパンディングを起こすことがあります。ケガであれば目視で判断できることもあるので、念のために全身をチェックしておくと良いでしょう。
病気が原因になることも
犬の息が荒い場合は、以下の病気を示している可能性もあります。
- 肺炎などの呼吸器系の疾患
- 心筋炎などの心臓の疾患
- 熱中症
- 短頭種気道症候群
- 鼻炎 など
この場合、パンディング以外にもぐったりしたり、姿勢に異常を感じたりとさまざまな症状を見せることがあるので、もしもパンディング以外の症状が見られた場合は病院への受診をおすすめします。
犬の息が荒いときに考えられる病気
先ほど犬の息が荒いときに考えられる病気について触れましたが、それぞれの具体的な原因や症状についてくわしく解説します。
肺炎などの呼吸器系の疾患
パンディングを引き起こす呼吸器系の疾患には、以下の病気が挙げられます。
- 肺炎
- 気管支炎
- 気管虚脱・気管支虚脱
肺炎
肺炎は、肺の中にある肺胞やその周辺が炎症を起こす感染症です。ほとんどの場合ウイルスや細菌感染が原因ですが、寄生虫によるものや刺激性のある薬物、ガスを吸い込むことで発症することもあります。
犬が肺炎を患うと、咳き込んだり鼻水が止まらなくなったり、苦しくて震えたりする場合があります。そして、肺炎によるパンディングは重症化のサインです。呼吸困難を起こして命に関わる恐れもあるため、すぐにでも病院へ連れていきましょう。
気管支炎
気管支炎は、ウイルスや寄生虫、ハウスダストなどの化学物質や誤飲などが原因で気管支に炎症が起こる病気です。気管支炎の場合、咳や食欲不振、元気を失うなどが見られますが、パンディングを起こしている場合は重症化による呼吸困難が疑われるので注意しなくてはなりません。
気管虚脱や気管支虚脱
気管虚脱や気管支虚脱は、気管や気管支が潰れて空気の通りが悪くなる病気です。原因は器官の軟骨が先天的に弱い場合や、肥満・加齢による気管への影響、発育異常などが考えられます。年齢や犬種によって発症しやすいとも言われており、7〜8歳くらいの中高齢やポメラニアン、ヨークシャテリア、チワワ、プードル、マルチーズなどの小型犬は発症しやすい傾向にあります。
気管虚脱や気管支虚脱は、呼吸音に「ヒューヒュー」「フガフガ」という音が混ざるのが特徴です。パンディングを起こしている場合は呼吸困難に陥っている可能性が高いので、すぐに病院を受診しましょう。
心筋炎など心臓の疾患
パンディングを引き起こす心臓の疾患には、以下の病気が挙げられます。
- 心筋炎
- 肺水腫
- 僧帽弁閉鎖不全症 など
心筋炎
心筋炎は、血液を全身に送り出すための心筋が異常を起こし、心臓の機能が低下する病気です。心筋炎により酸素を含んだ血液が体内に循環しなくなると、体内の酸素が不足して呼吸数が増えます。加齢とともに発症リスクも高くなるので、中高齢の犬は特に注意すべき病気と言えるでしょう。
肺水腫
肺水腫は、肺の中に水が貯まることで肺の機能が低下する病気です。酸素と二酸化炭素を交換する肺胞が水で潰れてしまうことから、呼吸困難に陥ってパンディングを起こすようになります。また、呼吸困難の悪化により口を開いて前足を突っ張るような姿勢をとるのが特徴です。緊急性が高いので、直ぐに病院を受診しましょう。
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の僧帽弁が変形してうまく閉じなくなることから、血液が逆流する病気です。犬の心臓病でもっとも多く見られる病気で、初期段階では無症状だったり咳き込んだりします。進行すれば、疲れやすくパンディングや呼吸困難を起こしやすくなるので注意が必要です。
熱中症
熱中症は、体温の上昇によって循環不全を起こしたり、脳や体内組織の酸欠を引き起こしたりする病気です。
パンディングは熱中症の初期段階による症状ですが、暑い時期だと日常的に見られる行動でもあるため、見分けがつきにくいのが難点です。暑い日に運動をしていないにも関わらずパンディングをしたり、体温が高くぐったりしていたりする場合は、体を冷やしながら病院へ連れていきましょう。
短頭種気道症候群
短頭種気道症候群は、パグやボクサー、ペキニーズなどの短頭種と呼ばれる犬種で発症しやすい病気です。短頭種気道症候群により鼻の穴が狭くなると(鼻孔狭窄)、鼻詰まりのような状態が続いてパンディングや呼吸困難を起こすようになります。
生まれつきの体の構造や遺伝によるものが原因なので予防法はありません。早い段階での対応や治療について、医師に相談する必要があるでしょう。
鼻呼吸なら鼻炎かも
息が早く荒い場合でも、口ではなく鼻で呼吸しているなら鼻炎の可能性も考えられます。重症化すると、鼻の内部が腫れて呼吸困難を起こすリスクが高いです。
原因としてはアレルギーや異物、腫瘍、細菌やウイルス感染などが考えられるので、もしも鼻呼吸が荒い場合は病院で検査を受けることをおすすめします。
下痢をして吐くなら病院へ!犬の息が荒いときの対処法
犬の息が荒いだけでなく、下痢や嘔吐が見られる場合は緊急性が高い症状と言えます。直ぐに病院を受診するようにしましょう。
また、息が荒い場合はエアコンを使用して室内を一定に保つようにします。うつ伏せなど犬が楽になれる姿勢をとり、呼吸しやすくしてあげるのがポイントです。場合によっては、顎の下に枕や丸めたタオルを置くと呼吸が楽になることがあります。
肺の圧迫を避けるためにも横向きや仰向けの姿勢はおすすめしあませんが、胸の下に痛みがある場合は横向きが良いでしょう。
夜寝てるときに犬の息が荒くなる原因は?気になる疑問を解決
「夜寝てるときに息が荒くなるのは大丈夫?」
「息が荒くても元気があれば大丈夫?」
など、犬の呼吸についてさまざまな疑問を持つ人も少なくはないでしょう。
寝ているときに息が荒くなるのは、時期によって体温調整をしている可能性もありますが、何らかの病気が隠れている可能性もゼロではありません。就寝時は、活動しているときよりも呼吸数が落ち着く傾向にありますが、あまりにも息が荒い場合は呼吸数を数えたうえで病院を受診しましょう。
また息が荒くても、元気があり時間の経過とともに落ち着くようなら心配ありません。体温調整や興奮しているときに見られる生理現象なら、病気を疑わなくてもよいでしょう。
ただし、時間が経っても落ち着かない場合や、いつもと違う様子を見せた場合には病院を受診してください。
犬の息が荒いときの原因や対処法を知って落ち着いて対応しよう
犬は生理現象により息が荒くなることが多いので、時間が経って落ち着くようなら心配はいりません。
ただし、ぐったりしていたり落ち着かなかったり、下痢や嘔吐などのほかの症状が見られる場合は病気が原因である可能性もあります。
室温を一定に保ったり、うつ伏せにしたりして愛犬が楽になれる姿勢を作っても、しばらくパンディングを続けるようなら病院へ受診しましょう。