2024/09/01

犬の血便は危険?鮮血などの種類や下痢などの症状と合わせて対処法を解説!

わんちゃんの便に血が混ざっていれば、どんな状況であれ不安を覚えるものです。とはいえ、血便の状態や回数によっては病院を受診する必要がないケースもあります。

もしも今わんちゃんの血便でパニックになっているなら、病院を受診する判断基準についてチェックしてみましょう。

本記事では、わんちゃんが血便をしたときの対処法や受診の判断基準、血便の原因などについて解説します。

犬に血便がある場合の対処法!元気があるなら大丈夫?急死する?

わんちゃんの血便で病院を受診すべきか悩んでいる人は、以下を参考にしてみてください。

様子を見て大丈夫な状態
  • 血が少量かつ便の硬さやニオイが正常
  • 嘔吐や下痢などはない
  • 食欲や元気はある
すぐに病院を受診すべき状態
  • 1日に何度も血便が出る
  • 血便が毎日続いている
  • 出血の量が多い
  • 元気も食欲もない
  • 嘔吐や下痢も見られる

犬の血便は、ほとんどの場合それほど深刻度は高くありません。焦らずに、血便の状態やわんちゃんの様子をチェックしましょう。

ではここで“様子を見て大丈夫な状態”と“すぐに病院を受診すべき状態”についてくわしく解説します。

様子を見て大丈夫な状態

実は、飼い主が思っている以上に犬の血便はよく見られるものです。

便に少量の鮮血が付着している程度で、その他の症状が見られない場合はしばらく様子を見ても良いでしょう。

もしも思い当たるストレスの原因があれば、その原因を取り除いてあげることも大切です。

そして新しいフードやおやつを与えたタイミングで血便があれば、念のためしばらく新しいフードやおやつを与えないようにして、胃腸を休ませてあげましょう。

ただし、血便が続いたり血便以外の症状が見られるようになれば、何かしらの病気が潜んでいる可能性があります。すぐに病院を受診しましょう。

すぐに病院を受診すべき状態

血便のほかに嘔吐や下痢、食欲の低下、元気がない様子が見られたり、血便を繰り返す、出血量が多いなどの場合は治療が必要なケースが多いです。迷わず病院を受診しましょう。

またわんちゃんによく見られる血便でも、命の危険を伴うケースがあります。

たとえば子犬期(特に生後3ヶ月未満)に多く見られる感染症や異物の誤飲、老犬期(高齢犬)に注意したい消化管のがん。このほかにも出血が止まらない場合も危険な状態であることが多いです。すぐにでも病院を受診しましょう。

獣医師

宮田先生

飼い犬に出血性下痢が見られても、その便を持たずに動物病院を受診する飼い主さんは意外に多いです。飼い犬の下痢便に遭遇した飼い主さんは、どうしても便の掃除に注意が集中してしまいますよね。ティッシュペーパーなどの紙類に染み込んだ便は、検便が難しいです。少量(小指頭大)の便を持って来ていただけると、検便が容易なので獣医師はありがたいです。

心配いらない血便は?犬の血便の症状はどんなものがある?

血便は、何らかの原因で消化管の粘膜が傷つき、出血したものが便と一緒に排泄されたものです。そして血便には、以下の3つタイプが見られます。

  • 真っ赤な鮮血が出る血便
  • 黒い血が出るタール便
  • ゼリー状の粘液がついた血便

血便の状態をチェックすることで、その原因がわかることもあります。病院を受診する際は、なるべく便を容器に取っておいたり、写真に残すことで獣医師に説明しやすくなるのでおすすめです。

では、3つの血便についてそれぞれ解説します。

真っ赤な鮮血が出る血便

便に真っ赤な鮮血が混ざっている場合は、肛門から比較的近い場所で出血が起こっている可能性があります。また大腸や直腸、肛門の周りからの出血が原因で鮮血混じりの血便が出ることもあります。

共通しているのは、出血してから便として排泄されるまでの時間が短いということです。

血がやや黒みがかっている場合は、時間がたった血液が変色している可能性があります。この場合、大腸の奥の方から出血していることが考えられるでしょう。

黒い血が出るタール便

血が黒く鉄のようなニオイがする場合は、酸化した血液が混ざっていると考えられます。血は時間が経つと酸化して変色するため、胃や十二指腸などの上部消化管の出血や、口の中で起きた出血を飲み込んでいる可能性があります。

ゼリー状の粘液がついた血便

便の表面に透明なゼリー状の粘液が付いている血便もありますが、これは腸粘膜の表面を覆う腸粘液が剥がれ落ちた状態です。

腸が不調ではない場合でも自然に出る場合があるので緊急性は高くありません。便の形や硬さがいつも通り、かつ症状が続かなければ心配する必要はないでしょう。

一方、便がゆるい場合は大腸炎の可能性もあります。もしも症状が続くなら病院の受診をおすすめします。

犬の血便で考えられる主な原因!嘔吐や下痢など注意すべきほかの症状も

わんちゃんの血便には、以下の原因が考えられます。

  • 異物の誤食や便秘
  • 誤食による中毒症状
  • 肛門付近のケガや病気
  • 胃や腸の病気
  • 感染症
  • ストレス

ここで、血便の具体的な原因や考えられる病気について解説します。

異物の誤食や便秘で便が固くなった

おもちゃや骨、棒など鋭いものを誤食すると腸の内側や肛門が傷つき、出血を起こすことがあります。また、便秘で便が固くなってしまうと排泄時に肛門を刺激して便に血が付着することもあります。

便秘の場合は水分を積極的に与えたり、運動不足を解消したりすることで解消される可能性がありますが、異物の誤食は場合によって深刻度が高いです。誤食について思い当たることがあれば、迷わず病院を受診しましょう。

誤食で中毒症状を起こしている

わんちゃんは、人間の食べ物を口にして中毒症状を起こすと血便や血尿、嘔吐などの症状が現れる場合があります。特に注意したいのが、玉ねぎです。

中毒症状は時間が経つと深刻化するため、血便以外にも痙攣や震え、貧血、血尿、吐血などの症状が現れればすぐに病院を受診しましょう。

肛門付近のケガや病気

  • 前立腺肥大
  • 会陰ヘルニア

去勢をしていない高齢犬に多いのが、前立腺肥大による血便です。血便以外にも血尿や排尿障害などの症状が現れる場合は前立腺肥大が疑われるので、病院で検査を行いましょう。

同じく去勢をしていないわんちゃんに多いのが、会陰ヘルニアによる血便です。これは肛門付近の筋肉が弱くなることで隙間ができ、隙間から臓器が飛び出ている病気です。血便以外に肛門周囲の腫れや便秘、患部を舐めたり噛んだりする症状が見られた場合も、病院で検査を行いましょう。

胃や腸の病気

  • 胃腸炎
  • 腫瘍・ポリープ
  • 炎症性腸疾患

便に少量の血や粘液が混ざる程度で、元気や食欲がある場合なら比較的軽度の胃腸炎であると考えられます。消化の良い食事を与えたり、きちんと対症療法をすれば回復する可能性が高いでしょう。

しかし、わんちゃんの元気がなく便とともに大量の鮮血が出ている場合は出血性胃腸炎の可能性が高いです。ときに命に関わることもあるので、できるだけ早く病院を受診しましょう。

血便が続く、また時間をおいて時々現れる場合は、腫瘍やポリープによる慢性的な出血が考えられます。注意したいのは、対症療法だけで血便が治まらない高齢のわんちゃんです。病院での受診や検査をおすすめします。

また、原因不明の胃腸炎を引き起こす炎症性腸疾患も、血便の原因としてよく挙げられます。腸粘膜が起こす異常な免疫反応により血便が出ると考えられるので、食欲不振や嘔吐、下痢などの他の症状が見られる場合は病院を受診しましょう。

感染症

犬パルボウイルス感染症は、ウイルスが小腸の粘膜に感染して破壊する病気です。感染により小腸の粘膜が激しく傷つくと、腸内細菌の二次感染が起こりより深刻な状態に進行する場合があります。血便だけではなく、下痢や嘔吐が見られる場合は要注意です。

また、1歳未満のわんちゃんはもともと寄生虫を持っているケースがあり、寄生虫による感染症で血便が出ることがあります。成犬の場合は症状が現れないことも多いですが、子犬の場合は血便だけではなく発熱が見られることもあるので、異変を感じたら病院を受診しましょう。

ストレス

何かしらの強いストレスを受けると、腸の収縮運動が増して激しい下痢や血便を引き起こすことがあります。考えられるのは、過敏性腸症候群です。

ストレスによる過敏性腸症候群は、治っては繰り返すのが特徴的なので、ストレスの原因を探し出して対処することがポイントとなります。

獣医師

宮田先生

犬の前立腺肥大は外側に向かって肥大する傾向があるので、人の場合と異なり近隣の直腸を圧迫することになります。

犬パルボウイルス感染症は1990年代にペットショップやブリーダーを中心に流行しました。ワクチン接種が普及し、またウイルスが弱毒化したためか現在ではほとんど見なくなりました。それでもウイルス性の出血性下痢症として、パルボウイルス感染症が代表的に上げられるのは、とても苦労をした当時の様子が獣医師たちの記憶に刻まれているからでしょう。私もその一人です。

犬に血便があるときの病院での診断方法や治療方法は?

まずは出血の原因を特定するために、以下のような検査を行います。

  • 便検査
  • 血液検査
  • レントゲン撮影
  • 超音波検査
  • 内視鏡検査

スムーズな検査のためにも、新しい便を持参しておくことをおすすめします。

また治療法としては、内服薬や食事の変更がメインです。場合によっては腸内環境を整える乳酸菌サプリメントの使用が検討されます。

獣医師

宮田先生

細菌性の腸炎は多くの場合抗生剤の投与で治癒します。ところが再発を繰り返す犬が時々います。この場合、抗生剤投与によって便が良くなったと同時に、抗生剤を止めて乳酸菌サプリメントを与えます。与える期間は一週間から一ヶ月程度。すると細菌性腸炎の繰り返しは見られなくなるのです。乳酸菌サプリメントを私はこのように使用しています。

犬の血便は再発する?再発を防ぐ方法も紹介

わんちゃんの血便は、発生原因によって再発するケースもあります。再発を防ぐためには、以下の方法で腸機能の改善を図ることがポイントです。

  • 慣れない食べ物は与えない
  • 消化しやすい食べ物にする
  • 日頃から便の状態を気にかけておく

慣れない食べ物は与えない

食べ慣れないものを口にすると、腸に負担がかかりやすくなります。もしもフードを変えたばかりで血便が見られたり、下痢が起こったりした場合には、新しいフードを中止しましょう。

消化しやすい食べ物にする

血便が出ている場合、わんちゃんの消化機能が落ちている可能性が高いです。消化に負担をかけないためにも、タンパク質は鶏ささみや胸肉のような脂肪分が少ないものを加熱して与えてみましょう。食欲がない場合は、1回の食事量を減らしても構いません。

日頃から便の状態を気にかけておく

便はわんちゃんの健康を知るバロメーターでもあります。形やにおい、排泄の回数などを観察することで異常に気づきやすくなるので、日頃から便の状態を気にかけておくと良いでしょう。

犬の血便はほかの症状と合わせてチェックしよう

わんちゃんの血便を見かけても、元気や食欲があり、他の症状が見られない場合は様子を見ても構いません。しかし、嘔吐や下痢など他の症状が見られる場合は、念のため病院へ受診することをおすすめします。
血便だけで判断するのではなく、他の症状が見られるかどうかもチェックしておきましょう。