犬の膵炎は持病や体質によってリスクが高くなる場合があるため、具体的な症状や予防について理解し、もしもに備える必要があります。本記事では、犬の膵炎の症状や原因、入院期間などについて解説します。
目次
犬の膵炎には急性膵炎と慢性膵炎がある!
犬の膵炎は、急性膵炎と慢性膵炎によってその原因や発症、症状、治療が異なります。
急性膵炎の症状は突発的であり、非常に重篤な状態なので即時の治療が必要です。その反面、徐々に進行する慢性膵炎は長期的な治療が必要になります。どちらにせよ、膵臓の機能に影響を与える病気なので健康管理には注意が必要と言えるでしょう。
では、急性膵炎と慢性膵炎それぞれの特徴についてより詳しく解説します。
放置は危険!犬の急性膵炎の特徴
急性膵炎は突然発症する病気で、激しい腹痛や嘔吐、発熱などの症状が急激に現れるのが特徴です。
軽度な炎症から膵臓以外の組織に影響を及ぼす重度な炎症など、程度はさまざまあります。
早い段階で適切な治療を受ければ回復する可能性もありますが、重症の場合は合併症のリスクや、場合によって命のリスクを伴うので放置は厳禁です。
余命が短いことも!犬の慢性膵炎の特徴
慢性膵炎は、徐々に進行することで膵臓自体が硬くなるのが特徴です。進行が遅く症状が断続的に現れることから、見落としやすい病気でもあります。
慢性膵炎にかかると完治が難しくなりますが、軽度であれば定期的な健康チェックや長期的な食事管理で体調を管理することができます。
一方、重度の場合や合併症がある場合は命のリスクを伴うので、早期発見のためにもささいな異変があればすぐに病院を受診しましょう。
犬の膵炎になりやすい犬種や年齢など特徴を解説
膵炎は高脂血症により発症するリスクが高いため、先天性の高脂血症や高リポ蛋白血症が多い犬種は膵炎にかかりやすいと言えます。該当するのは、ミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグなどです。
また高脂血症だけでなく、肥満も膵炎の発症に繋がります。よって、人の食べ物を食べてしまう犬は膵炎の発症リスクが高いと言えるでしょう。
もちろん膵炎はどの年齢でも起こり得る病気ですが、発症しやすい傾向になるのは中高齢の犬です。膵炎は、脱水やクッシング症候群(副腎皮質機能亢象)を発症している場合に起こりやすいため、基礎疾患が増える中高齢の犬は発症リスクが高くなります。
震えや嘔吐など!犬の膵炎の主な症状をチェック
膵炎の代表的な症状は嘔吐や食欲不振、腹痛です。加えて、急性膵炎と慢性膵炎では症状自体が異なる場合もあるので、それぞれチェックしておきましょう。
- 嘔吐
- 下痢
- 気持ち悪そうにする(よだれを垂らすなど)
- 食欲不振
- 腹痛
- 元気がなくぐったりしている
- 食欲不振
- 元気がなくぐったりしている
- 下痢
- 嘔吐
膵炎の症状は、ほかの消化器系の疾患と区別がつきにくいと言われていることから、症状を見るだけで膵炎だと断定するのは難しいとされています。検査の結果で重度の膵炎だと診断された犬でも、食欲を見せる個体がいるほどです。
症状の程度においても個人差が非常に大きいですが、いずれにせよ嘔吐を繰り返したり重度の食欲不振が見られたりする場合は、すぐに病院を受診しましょう。
ではここで、膵炎の主な症状についてくわしく解説します。
嘔吐や食欲不振
急に嘔吐を繰り返すことが多いです。水を飲んでも嘔吐したり、黄色い液体(胃液)や透明な泡を何度も吐くことがあります。
また、おやつや缶詰すら食べられないほど食欲不振に陥ることがあります。犬の性格や症状によっては好物のみ口にすることもあると言いますが、キャベツやブロッコリーなどの野菜を食べることもあるようです。これは本能的に脂質の摂取を避けようとするためだとも言われています。
腹痛
膵炎の影響で急な腹痛が起こると、元気をなくしたり活動量が落ちたりする様子が見られます。上半身を伏せ、腕を伸ばしながら腰を上げる特徴的な姿勢が見られれば、それは強い腹痛を示すサインです。
お腹の痛みによっては、抱きかかえたりお腹に触れようとしたりすると「キャン」と鳴くことがあります。
発熱
膵炎は膵臓の炎症を伴う病気なので、体が膵臓の炎症に免疫反応を起こすと発熱が見られるケースがあります。
元気がなくて動かない
腹痛や脱水によって活動量が減ると、元気をなくしてぐったりした様子を見せることがあります。「ハーハー」といった荒い呼吸が見られる際は、循環状態の悪化や痛みを示すサインです。
重度な症状だと、全身の臓器不全を起こして昏睡状態に陥る可能性があります。膵炎は特異的な症状がないぶん判断が難しいですが、少しでも違和感を覚えたら早期受診をおすすめします。
犬の膵炎が重症な場合の末期症状は?急変することはある?
膵炎の末期症状としては、黄疸が挙げられます。黄疸は犬の目の白目部分が黄色っぽく見えるのが特徴です。
また膵炎が進行すると、膵臓の炎症が全身の臓器に及びます。これにより腎不全や全身性炎症反応症候群、播種性血管内凝固、多臓器不全などの重篤な併発症を引き起こすと、命を落とすリスクが高くなります。
そして注意したいのが、犬の膵炎は容態が急変しやすいという点です。これらの症状が急に現れた際は急性膵炎が悪化している可能性があります。
- 激しい腹痛が見られる
- ぐったりして何も食べない
- 皮ふに点状内出血を起こしている
- 血色が悪い
症状が重症化すると命に関わるリスクがあるため、すぐに病院を受診しましょう。
犬の膵炎の主な原因は?食べ物は関係ある?
膵炎は肥満や高脂肪食、内分泌疾患、薬剤が要因になることもあると言われていますが、これらはあくまで要因であり原因とは限りません。膵炎といっても、原因がはっきりしていないことが多いのが現状です。
とはいえ、高脂肪食や肥満は日頃の生活習慣が大きく関係するため、原因になり得る食べ物を与えすぎないように注意すると良いでしょう。
特に気をつけてほしいのが、人間用の食べ物を与えないようにすることです。
小型犬や超小型犬の場合、たとえ一口であっても人間用の食べ物を口にすると大量の脂肪分を接種することになるため、膵炎発症のリスクも高くなります。
過去に膵炎になったことがあるわんちゃん、また膵炎の発症リスクが高い中・高齢犬や肥満気味のわんちゃんには、人間用の食べ物を与えないように注意しましょう。
犬の膵炎の診断や治療の方法は?治療費や入院の必要は?
膵炎はほかの病気で見られる症状を引き起こすため、血液検査や画像診断などを組み合わせながら慎重に診断します。
重症だと判断された場合は入院管理による治療が行われますが、確実に治る治療法は今のところありません。しかし近年では初期の膵炎に効果が期待できる新薬も発売されたため、治療により重症化を防げるケースもあります。
そこで気になるのが、入院期間や治療費などです。
では、膵炎の診断方法や治療法、治療費などについてくわしく解説します。
犬の膵炎の診断方法
膵炎が疑われる場合、まずは以下の検査を行います。
- 血液検査
- X線検査
- 尿検査
- 犬特異的膵リパーゼ
- 超音波検査
- 膵生体検査 など
膵炎の指標となるのは、血液検査によるLIP(リパーゼ)の値です。場合によっては血液検査を専門の機関に依頼して測定し、全身性疾患や合併症がないかなども検査したうえで診断を行います。
急性膵炎の確定診断のために膵生体検査が行われる場合もありますが、外科手術や麻酔が必要になるためあまり実施されていません。
また先述の通り、膵炎はほかの病気で見られるような嘔吐や食欲不振を起こすことも多いため、必要に応じてその他の検査も行われます。
犬の膵炎の治療方法や入院期間
急性膵炎や重症の場合は、最低1週間以上の入院措置をとり支持療法が行われます。支持療法とは、重篤な疾患に伴う症状や治療の副作用を減らし、生活の質を改善する目的で行われる治療法です。
入院中は点滴のほか、炎症を抑える薬や鎮痛剤、下痢止め、吐き気止めなどの投与が行われます。嘔吐がなければ、早期に食事を再開して低脂肪食や療法食を口から与えます。
入院費は5〜10万円程度です。
また、軽症で入院の必要がない場合は診察と薬の内服で治療を進めます。初日の費用は2〜3万円程度ですが、通院となれば1回あたり3,000〜8,000円程度です。
膵炎の治療にかかる費用は決して安くありませんが、ほとんどのペット保険で補償対象となっています。治療に専念するためにも、ペット保険の加入がおすすめです。
犬が膵炎になっている間の食事管理方法
膵炎の間の食事については、控えるべき栄養素と積極的に取り入れるべき栄養素があります。
- 脂肪
- 糖質
- タンパク質
- 食物繊維
脂肪が多い食事は膵臓から多くの消化酵素が分泌されるため、膵炎の進行が早まるリスクがあります。とはいえ脂肪は犬の体に必要な栄養素でもあるため、脂肪の量を抑えつつエネルギー源として摂取できる“低脂肪”の食事がポイントです。
また、低脂肪かつ消化の良いドッグフードや食事を与えることも大切です。パン屋麺類など小麦を使用した加工食品やフードは消化しにくい特徴を持っているため、グルテンフリーやグレインフリーのドッグフードをおすすめします。
急性膵炎の場合は再発や慢性膵炎へ移行するケースも多いので、慢性膵炎同様に食事による予後管理をしっかり行いましょう。
健康的に過ごす!犬の膵炎の予防方法
犬の膵炎を予防するポイントを以下にまとめました。
- 高脂肪のフードやおやつを与えない
- 低脂肪かつ消化の良いフードを与える
- 脂肪には健康面でメリットのあるオメガ3脂肪酸がおすすめ
- 適正体重を維持する
犬の膵炎を予防するためには、徹底した食事管理だけでなく体重管理も重要です。肥満は膵炎以外のさまざまな病気を招き、体に悪影響を及ぼすので注意しなくてはなりません。
犬の膵炎は治ることが多い!放置せずに治療しよう
犬の膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があります。おもな症状は嘔吐や下痢、食欲不振ですが、急性膵炎の場合は突発的に激しい症状に襲われるのがその特徴です。
膵炎は早期治療で改善が期待できますが、症状に関してはほかの病気と区別がつきにくいのが難点です。
少しでも気になる症状があれば、病院を受診して適切な治療や検査を受けましょう。